アナトリ・コルヌコフ極東司令官(42)

 ソ連防空軍側で公表した文書(1993年ICAO報告書)によると、Su-15TMのミサイルが命中した後、GMT世界標準時間18時28分(日本時間3時28分)、その標的KAL007は北へ向かった。標的は、8分後5000mまで降下し、モネロン島上空で2回旋回。螺旋状にさらに降下した。ソ連側には「撃墜した」と知らされていたターゲットがレーダーにまだ映っていたので、RTF(MiG31のコールサイン)は、MiG23を同伴してサハリン東側Dolinsk-Sokol基地を即座に発進した。

 MiG31(最大速度3,000km/h)は、1983年9月から極東サハリンに配備された記録がある。この当時、MiG31はソ連国内最新鋭機で、それ以前の型であればMiG23。オシポビッチ空軍少佐が休暇を終えて戻った8月16日までに、ソコル基地の迎撃戦闘機はMiG23とMiG31に換えられていた。わざわざRTFのコールサインにしたのは、MiG31と知られないようにする意図が、コルヌコフ極東司令官の会話に含まれている。アメリカでも日本でも無線での指令や連絡は、傍聴されている事が知られているため、コールサインを使用していた。


ソコル防空軍基地極東司令官コルヌコフ 1983年/Izvestia
 ソコル防空軍基地司令官コルヌコフ(Kornukov)将軍から、「発見次第ただちに撃墜せよ」という指令が出ていた。コルヌコフ司令官は、オシポビッチ空軍少佐がミサイル2発を発射した事を確認したが、それでもターゲットがレーダーに映っていた事に激怒していた。彼は、さらに破壊力と性能の高いミサイルを発射するしか標的を撃墜する方法がないと判断し、Su-15TMとは異なる新型ミサイルを搭載したRTF(MiG31)とMiG23を発進させた。

コルヌコフ:ソコル空軍基地極東司令官
ゲラシメンコ:司令官代理(空軍中佐)
チトブニン:戦闘機部門戦闘管理センター航空管制官

Titovnin:Flight controller, Fighter Division Combat Control Center
"The pilots do not see it, neither the one nor the other. The radio forces have reported. RTF has reported that after the launch, the target entered a right turn over Moneron."(ICAO report,1993)
パイロットたちは、標的を見ていない。あいつもこいつも。と無線士たちは伝えた。RTFは、(ミサイル)発射後、ターゲットがモネロン島上空で右旋回へ入ったと報告した」
チトブニン航空管制官のこの会話には、誘導式空対空ミサイルSARHの方が確かだという重要な意味が含まれている。RTFには長距離空対空ミサイルR-33が4発搭載されていた。ソ連の極東基地としてアメリカの偵察機を打ち落としたり対抗するには、ソ連側各基地からの電波で誘導できる新鋭空対空ミサイルAAMの装備が必要不可欠だった。
1981年に米国で開発された新鋭ステルス機に関して、ソ連側では敏感になっていた。ステルス機の性能について米国側の情報は極秘で、アメリカの雑誌から噂でしか聞く事ができなかった。いわゆるレーダーに映らない新鋭の偵察兼戦闘機。それがどこで使用されているかソ連側では見当が付かなかった。アメリカのレーガン大統領は、ステルス機の性能とその使用目的についてまで軍部から知らされていた事が十分考えられる。


Anatoly Kornukov Commander, Russiun Air Force, 2007/Unsolved history KAL007
日本時間 <ソコル空軍基地ロシア語 国連で公開された英訳ICAO報告書>

03:21 Kornukov Gerasimenko, cut the horseplay at the command post, what is that noise there? I repeat the combat task: fire the missiles, fire on target 60-65. KAL 007 destroy target 60-65.
ゲラシメンコ、あの雑音は何だ?指揮所で騒がないでくれ。繰り返す。戦闘続行。ミサイルを発射しなさい。目標60-65(KAL007)で発射せよ。目標60-65を破壊せよ。
03:22 Gerasimenko Wilco.
了解。
Kornukov Comply and get Tarasov here.Take control of the MiG 23 from Smyrnykh, call sign 163, call sign 163, he is behind the target at the moment. Destroy the target!
応答せよ。それからタラソフをこっちに呼びなさい。スミルニク(基地)からMiG23のコントロールをせよ。コールサイン163(MiG23)、コールサイン163、彼はもうすぐ標的の後ろだ。その標的を破壊せよ。
Gerasimenko Task received. Destroy target 60-65 with missile fire, accept control of fighter from Smyrnykh.
任務を受け取った。ミサイル発射で標的60-65を破壊せよ。スミルニク(基地)からの戦闘機制御を受け入れよ。
03:22:02 Kornukov Carry out the task, destroy it!
その任務を遂行せよ。それを破壊せよ!
Osipovich The target is decreasing speed.
その標的は、スピードを下げている。
03:22:17 Osipovich I am going around it. I’m already moving in front of the target.
私は、その周りを飛んでいる。既にその標的の前に来ている。
Titovnin Increase speed, 805 (call sign of Osipovich’s Sukhoi).
スピードを上げよ、805(ホシポビッチ空軍少佐Su-15TMのコールサイン)。
03:22:23 Osipovich I have increased speed.
スピードを上げた。
Titovnin Has the target increased speed, yes?
その標的は、スピードを上げたか、どうだ?
03:22:29 Osipovich No, it is decreasing speed.
いいや、スピードを下げている。
Titovnin 805, open fire on target.
805、標的へ攻撃せよ。
03:22:42 Osipovich It should have been earlier. How can I chase it. I’m already abeam of the target.
もっと早めにすべきだった。どうすれば攻撃できるか。既に私はその標的の横にいる。
Titovnin Roger, if possible, take up a position for attack.
了解。できれば、攻撃態勢をとりなさい。
03:22:55 Osipovich Now I have to fall back a bit from the target.
今は、その標的から少し引き下がらなければない。
Kornukov Oh, obscenities. How long does it take him to get into attack position, he is already getting out into neutral waters. Engage afterburner immediately. Bring in the MiG 23 as well... While you are wasting time it will fly right out.
こら、いつまでかかっているんだ。そいつは既に中立領域に出ようとしているぞ。すぐにアフターバナーせよ。ついでにMiG-23も連れて行け。ぐずぐずしているとそいつは逃げてしまうぞ。
Titovnin: 805, try to destroy the target with cannons.
805、大砲でその標的を壊してみろ。
03:22:37 Osipovich I am dropping back. Now I will try a rocket.
私は後ろへ引き下がっている。じゃあ、ロケットにしてみる。
Titovnin Roger.
了解
03:23:49 MiG 23 (163) Twelve kilometers to the target. I see both.
その標的から12キロメートル。私はどちらも見ている。
Titovnin 805, approach target and destroy target.
805、標的に接近して破壊しなさい。
03:24:22 Osipovich Roger, I am in lock-on.
了解、ロックを解除している。
Titovnin 805, are you closing on the target?
805、その標的に照準を合わせているか?
03:25:11 Osipovich I am closing on the target, am in lock-on. Distance to target is eight kilometers.
その標的に照準を合わせ、ロックを解除している。標準までの距離は8km。
Titovnin Afterburner.
アフターバナー。
Titovnin AFTERBURNER, 805!
アフターバナー、805!
03:25:16 Osipovich I have already switched it on.
私は既にスイッチを入れた。
Titovnin Launch!
発射!
03:26:20 Osipovich I have executed the launch.
発射を実行した。
03:26:22 Osipovich The target is destroyed.
標的を破壊した。
Titovnin Break off attack to the right, heading 360.
攻撃を打ち切り右側へ、360度旋回。
03:26:27 Osipovich I am breaking off attack.
攻撃を打ち切った。
03:26 Kornukov Do you see the target on the screen?
レーダースクリーンでその標的を見ているか?
Gerasimenko We can see it for the moment.
少しの間、見る事ができます。
Kornukov Did he fire both missiles or one?
彼は、両方のミサイルを発射したのか、ひとつか?
Gerasimenko Both missiles…
どちらのミサイルも…。
Kornukov Bring in the MiG 23
MiG23を連れて行きなさい。
Kornukov Gerasimenko!
ゲラシメンコ!
Gerasimenko Yes.
はい。
03:27 Kornukov This is the task… Bring the MiG 23 in to destroy the target.
これは任務だ。その標的を破壊するためにMiG23を連れて行きなさい。
Gerasimenko Yes, Sir.
判りました。
Kornukov Gerasimenko.
ゲラシメンコ。
Gerasimenko
163(MiG 23)has been ordered to engage afterburner. We are bringing him to attack position.
163がアフターバナーをかけるように命令されました。我々は彼を攻撃位置に着かせています。
Kornukov Roger. Did Osipovich see the missiles explode? Hello?
了解。オシポビッチはミサイルが爆発したところを見たのか?おい?
Gerasimenko He fired two missiles.
彼はミサイル2発を発射しました。
Kornukov Ask him, ask him yourself, get on channel 3 and ask Osipovich, did he or did he not see the explosions?
彼に聞いてみろ。あなた自身で彼に聞いてみなさい。チャンネルを3にしてオシポビッチに聞きなさい。彼はその爆発を見たのか見なかったのか?
Gerasimenko Right away.
すぐにそうします。
03:28 Novoseletski Titovnin, well, what is happening?
チトブニン、じゃぁ何が起こっている?
Titovnin Nothing for the moment.
さしあたり何も起こっていません。
Novoseletski Well, what is happening, what is the matter, who guided him in, he locked on, why didn’t he shoot it down?
じゃあ、何が起こっている。どうしたんだ。誰が彼を案内した。彼はロックを解除して、何故打ち落とさなかった?
Titovnin They fired. They fired. We are now waiting for the result, Comrade Colonel.
発射しました、発射しました。我々は現在、その結果を待っています、大佐。
Gerasimenko The target turned to the north.
その標的は、北へ向かいました。
Kornukov The target turned to the north?
標的が北へ向かった?
Gerasimenko Affirmative.
そういうことです。
Kornukov Bring the 23(MiG)in to destroy it!
それを破壊するために、23を連れて行きなさい。
Gerasimenko Comrade right turn.
大佐、右へ曲がりました。
Kornukov Well, I understand, I do not understand the result, why is the target flying? Missiles were fired. Why is the target flying? Obscenities Well, what is happening?
それで判った。私はその結果を理解していない。何故標的が飛んでいる?ミサイルが発射されたのに、なぜ標的が飛んでいるのか?くそ、何が起こっているんだ?
Gerasimenko Yes.
はい。
Kornukov Well, I am asking, give the order to the Controller, what is wrong with you there? Have you lost your tongues?
それでは、私が尋ねる。管制官に命令しなさい。何か間違いがあるか?どうしたんだ?
Gerasimenko Comrade General, I gave the order to the Chief of Staff, the Chief of Staff to the Controller, and the Controller is giving the order to…
大佐、私が職長へ命令し、職長は管制官へ、その管制官は…へ命令しています。

03:30 Kornukov Well, how long does it take for this information to get through, well, what, you cannot ask the results of firing the missiles, where, what, did he not understand or what?
それで、この情報を得るためにいつまでかかっているんだ。君は、ミサイル発射の結果を聞く事ができない。どこで何を、彼は何を理解したというんだ。
03:32 Kornukov Tell 23 (MiG 23)...Afterburner. Open fire. Destroy the target, then land at home base.
MiG23に言いなさい。アフターバナー。発射口を開け。その標的を破壊せよ。それから基地へ戻れと。
Gerasimenko Roger.
了解。
Kornukov Altitude...what is altitude of our fighter and the altitude of the target?
Quickly. the altitude of the target and the altitude of the fighter?..
Why don't you say anything?...Gerasimenko!...
高度...戦闘機の高度と標的の高度はどのくらいだ?急いで。標的の高度と戦闘機の高度は?..なぜ何も言わない。ゲラシメンコ!
03:33 Gerasimenko Altitude is 5,000.
高度は5,000です。
Kornukov 5,000 already?
既に5,000?
03:34 Gerasimenko Affirmative, turning left, right, apparently it is descending.
そうゆうことです。左へ旋回、右へ、見たところ降下しています。
Kornukov Destroy it, use the 23 to destroy it, I said!
それを破壊せよ。破壊するために23を使いなさいと私は言ったが!
Gerasimenko Roger, destroy it.
了解、破壊せよ。
Kornukov: Well, where is the fighter, how far from the target?
じゃあ、戦闘機はどこにいる?標的からどのくらい離れているか?
Gerasimenko Comrade General, they cannot see the target.
司令官、彼らは標的を見る事ができません。
Kornukov They cannot see the target?
標的を見る事ができない?
03:36 Kornukov Obscenities well you know the range where the Target is, it is over Moneron.
なんということだ。君は標的がいる範囲を知っている。それはモネロン上空だ。
03:38 Titovnin They lost the target, Comrade Colonel, in the area of Moneron.
彼らはモネロン領域内で標的を見失いました、大佐。
Novoseletski In the area of Moneron?
モネロン領域で?
Titovnin The pilots do not see it, neither the one nor the other. The radio forces have reported. RTF has reported that after the launch, the target entered a right turn over Moneron.
パイロットたちはそれを見ていない。それも他も。RTFが発射した後、その標的はモネロン上空で右旋回に入ったと無線士たちは報告した。
Novoseletski Uh-huh.
そうか。そうか。
Titovnin Descending. And lost over Moneron…
降下しています。そしてモネロン上空で見失いました…
Novoseletski So, the task. They say it has violated the State border again now?
そう。任務だ。その国境の境界が現在は再び壊されてしまったと彼らは言う。
Titovnin: Well, it is the area of Moneron, of course, over our territory.
そうです。それはモネロン領域、もちろん、我々の領域上です。
Novoseletski Get it! Get it! Go ahead bring in the MiG 23.
わかった!わかった!お先にMiG23を連れて行け。
Titovnin Roger. The MiG 23 is in that area. It is descending to 5,000 meters. The order has been given. Destroy upon detection.
了解。MiG23は、あの辺りにいる。それは5,000mへ降下している。命令はしていた。発見しだい破壊せよ。

[英文和訳と解説:佐藤]

 MiG23は、この後、モネロン島付近でレーダーから消えたKAL007を発見できず、ソコル防空軍基地へ戻った。


 コルヌコフ司令官の会話の中に、what is that noise there? という表現があり、the noiseその雑音は、the horseplay「ばか騒ぎ」の事だが、文の前後から判断すると、勤務中で攻撃前の時に「ばか騒ぎ」は無理なため、受信電波による騒音ではないかと解される。高度や場所により電波が入り乱れて飛び交っている層がある。その雑音を解読しようと受信チャンネルを変えていたのではないかと考えられる。オシポビッチ空軍少佐の解説によると、前方を旋回する誘導前に雑音層にあたり、後ろから追いかけてきたMiG23からの交信が、金切り声のように聞こえたと語っている。KAL007が高度10,000mに達した3時20分21秒から水平飛行に入った後の会話であれば、その雑音は、Su-15TMによる上昇中に連射された徹甲弾250発の射撃音と警告用モールス信号の電波発信音ではないかと解される。

 ソコル空軍基地からSu-15TM、スミルニク空軍基地からMiG23各1機、最初に発進。Su-15TMによるミサイル攻撃の後、再びソコル空軍基地からRTFとMiG23が発進して追撃。ミサイルを発射したが、モネロン島上空領空内でKAL007を見失い、基地へ戻った。日本側の当時の新聞にはソ連側では合計8機発進したと報道されていた。


 18時32分(JST3:32)、コルヌコフ司令官からMiG23に攻撃命令、「アフターバナー(再燃)で発射せよ」。この命令は、RTFが搭載している新鋭ミサイルの種類が知られ、ソコル基地に用意されてある本数が限られている事による司令官の判断だった。しかし、MiG23が発射する前に、標的を捉えていたRTFがミサイルを発射した。この報告書の中ではミサイル1発か2発か記されていない。MiG同伴の場合、2発と考えられる。
 KAL007はその追跡を察し(レーダーの有無不明)、モネロン島上空で右へ旋回。急降下することによって発射されたミサイルの追撃を避けた。追撃機は、結果的に標的を見失い、KAL007はその後レーダーから消えた。

 標的(KAL007)が高度11,000mで爆発後、5,000mまで急降下するのに8分かかり、追撃機2機(3機説もある)でそれを追った時、標的は左にも右にも機体を傾けたという事も記されている。ソ連と日本のレーダーに12分間、KAL007の機影が映っていたとすると、残り4分で海上の爆発地点まで降下することは無理ではないかと疑問に思える。そうであればソ連側の追撃機がモネロン島上空でミサイルを発射して避けた時まで12分という事になり、その後はレーダーから消えた事になる。しかしレーダーから消えたとしても、雲の厚さがそれほどないので雲間からさらに降下した後、再び反応したのではないか。水蒸気は電波を吸収しやすいので海面上の湿気を利用したと思えるが、海上で低空飛行をするとレーダーに反応しない角度があるという事は、一般的に知られていない。

 この日は、モネロン島とサハリン上空5,000mから3,000mの所々に薄雲がかかり、2,000m上空は雲海が続く曇り日だった。1983年稚内8月31日(水曜)の午前中は雨、午後から曇り、最高気温18.6℃最低気温15.5℃。9月1日(木曜)は1日中曇り、最高気温19.9℃最低気温16.3℃、日の出時間4時54分。
 KAL007のパイロット千炳寅(Chun byung-in)は、東から(サハリン)から西へ接近してきた追跡機2機を目撃、あるいは背後からの追跡を予測し、発射されたミサイルを右下に急降下しながら旋回して避けた。雲の中に入れば戦闘機もミサイルも追ってこない。モネロン島上空で右へ何度も旋回しながら雲の中に突入し、さらに降下、モネロン島付近の海面の明かりがかすかに見えてから、遠方の漁火を目標に北方へ低空飛行をした。さらにイカ釣り漁船上空でユーターンし、モネロン島の方へ向かった。
 イカ釣り漁船の北か東か南かは、墜落地点を確認しないとはっきりしないが、その当時のニュースでモネロン島から近く浅い海域と知らされていた時もあった。KAL007は、島の上空で2回旋回しながら螺旋状に急降下し続けた事を考えると、レーダー用マーキングによって着水地点を表現したことになる。この日は曇り空のため、高度2,000m〜500mは雲でおおわれていた。さらに高度を下げた時、海面上の漁火の灯りが見えた。その灯りを頼りに沿岸付近に着水するしかなかった。救助について考えると、できるだけ岸に近い海面に着水すべきと瞬時に思わざるを得ない。

 1978年4月21日のKAL707事件で、レーダー式や赤外線式ミサイルは低空飛行をすると当たらず反れると言う事が知られていた。しかし、外れたはずのミサイルが方向を変え、戻ってくるかどうかまでは、はっきりしていなかった。もしRTFミサイルがダーゲットを捉え、自在に方向が変わる種類の長射程空対空ミサイルR-33(ARHアクティブレーダーホーミングとソコル基地電波による誘導式SARH)であれば、着水失敗によるのではなく、KAL007が雲の下まで降下した時、既に発射されていたR-33ミサイルに位置を捉えられ、それが真横から命中して爆発したという事も現実的に考えられる。
 KAL007がモネロン島北側で大爆発したということは目撃者たちによる確かな事実である。RTFが発射したミサイルは、Su-15TMが搭載していたミサイルより爆発力と追撃命中率の高いミサイルである事も間違いない。
 KAL007のパイロットは、乗員乗客と死傷者の救助のため、モネロン島から離れ過ぎている着水地点を選ぶはずがなく、モネロン島にできるだけ接近し、沿岸から近い海上を予定していたに違いない。しかし、海面から数十メートルの低空飛行をしながらモネロン島に接近しようとしたが、その途中でミサイルが横から当たり、その爆発のショックで海面に激突したため大爆発を起こしたか、徹甲弾による燃料漏れと着水時の衝撃で燃料タンクが爆発したかはっきりしていない。
 左右2基のジェットエンジンでバランスを取りながら不時着水することは不可能ではない。目測で海面からの高さの見当を付けるには、暗過ぎてほとんど見えない状態だった。モネロン島が見えていたか。30km離れている一隻の漁火の灯りでその島が見えるかどうかは、目が暗闇に慣れたとしてもあやしい。ドカーンという最初の爆発音から推測すると、着水時の激突音にしては、大き過ぎるという疑問があった。電気系統が故障していなければ、着水前の手段としてランディングライトを点ける事ができたはずで、夜間用の着陸ライトは点灯する状態だったと言う事が考えられる。

 1983年9月1日、アナトリ・コルヌコフがドリンスク・ソコル防空軍基地の司令官であったころ、KAL007便がカムチャッカ上空のソビエト空域に進入しました。
極東軍管区防空軍の指揮官であるヴァレリ・カメンスキー将軍(当時中将)の部下として、またサハリン島のソコル防空軍基地の指揮官として、コルヌコフはカメンスキーから指令を受け、米国を含む260人を乗せた大韓航空007便を撃墜した。
「中間海域を超えても破壊しますか?中間海域(サハリン・モネロン島間)でも破壊する命令ですか?」。カメンスキーは、KAL 007を国際水域で撃墜するように命じていたが、彼は「最初に民間人ではないことを確認する事」を主張した。コルヌコフは「その必要はない」と主張。カメンスキー「私たちは見つけなければなりません。多分それは民間機で、神が誰であるかを知っているかだ」。コルヌコフ「民間人ですか? それはカムチャッカ上空を飛行しました!それは識別灯無しで海から来ました。サハリン州国境を越えた場合、攻撃するよう命じられています」。
 コルヌコフは、KAL007がサハリン島ソビエト空域から中間空域を通過しようとしていたため、撃墜命令を下しました。「攻撃位置まで移動するのにどれくらい時間かかるか。アフターバーナー後にエンゲージしました。MiG23もつれていきました。遅いと直ぐに追い越されます」。

 
 1976年に彼の指揮下のパイロットであるビクターベレンコが当時のソビエトの最も高度な戦闘機であるMiG-25で日本に亡命した。その後も地位を保持していたコルヌコフもKAL 007事件を生き延び、最終的には彼の仕事分野で可能な限りの最高指揮官になった。 1998年1月22日、ボリス・エリツィンは、コルヌコフをロシア空軍司令官に任命した。エリツィンによるこの任命は、1992年以来空軍を率いていたピョートル・ダイキン将軍をエリツィンが解雇した直後でした。ダイキンは、イルクーツク空港で離陸後すぐにロシア空軍アントノフAN-124貨物飛行機が墜落した後、辞任を迫られました。近くのアパートで60人以上が死亡したためです。
 
 2002年1月、コルヌコフはロシア空軍の司令官を辞任し、ミサイル防衛およびロシアの都市に対する空中ハイジャック犯テロ攻撃に対する防衛の問題についてロシア連邦に助言しました。空からのテロの脅威に対して、彼はロシアの防空司令官がしばしば不在であり、負けを過ぎており、調整が不足していることを考え、ロシアは準備ができていないと考えていました。 2004年3月31日のプラウダで報告された彼の確固たる姿勢は次のとおりです。「ロシア空軍の元司令官アナトリーコルヌコフ将軍は、バルト海諸国の後にロシア国境近くに現れるNATO航空機に対処するのに厳しいロシア当局に呼びかけ、同盟に参加する事を募るように」と、ロシアジャーナルで述べた。 NATOはロシアの新しい国境で7つの同盟国を獲得しました。 「NATOが拡大しているため、NATO航空機への厳しい措置を含む厳しい方針を適用する必要があります。航空機が州の境界に違反した場合、撃墜しなければなりません。国際法はこれを許可しています」
「そもそもバルト諸国は、近隣諸国との関係は、隣接する国境に沿った軍用機の弾幕とは何の関係もないことを思い出すべきである。彼らは武装している可能性が高い」。 
 コルヌコフは、KAL 007に乗った犠牲者についてどのように感じたかを尋ねたところ、「撃墜により不快な気持ちが残ったが、犠牲者は単に支払わなければならない代償である」事を示唆した。「今日のヒーローはロシアテレビのインタビュー番組です」。コルヌコフは「私は常に正しい命令を下したと確信している。戦略作戦では、軍隊を救うために大隊を犠牲にしなければならなかった。その当時の状況では、大韓航空機事件は、事前に計画された行動だと確信している。非常に明白な結果を追求しました」。
彼は2014年7月1日に72歳で死去。ニューヨークタイムズ

(C)Junpei Satoh/The truth of Korean Air Lines Flight 007,15 August 2009-2024-