KAL007_コクピット会話Ⅱ(9)


Boeing747-230B 下の機器がINS

機長 チュン・ビュン・イン Chun Byung-In 千炳寅
副操縦士ソン・ドン・フイ Son Don-Fui
航空機関士キム・ユイ・ドン Kim Yui-Don
グリニッジ標準時間GMT18:00:00 日本時間JST03:00:00>


18:15:52        聞き取れる程度の音でモールス信号の伝達が始まる。
18:17:44 015 HF   大韓航空015は、37,000フィートに到達した。

KA015は、KA007 の後の便で、既に11,000mまで上昇した事がKA015から東京管制塔へ連絡された。

18:17:49 TOKYO HF  「大韓航空015 東京了解」

18:18:06        聞き取れるモールス式伝達。
           モールス信号のボリュームの著しい増加。

18:19:20雑音のため解読不可 Su-15TM通過時のジェット轟音と機関砲の連射音オシポビッチ元空軍大佐の解説図を参考にすると100m以内の至近距離でフロントガラスが振動するほどの爆音(機内会話のボリュームに合わせ、聞き取りやすくするため、過剰な金属音を省き音量を均一に下げた個所)


18.19:26       雑音のため解読不可 Mig23による追撃が加わる
18.19:40       雑音のため解読不可
18.20:02 TOKYO HF  呼び出し装置
18.20:09 007 HF 1   KA007 呼び出し

18.20:11 TOKYO HF 「KA007クリアー東京ATCクリア」

KA007が上昇してフライトレベル350に達しようとしていた。

18.20:21 007 HF 1 「了解、大韓航空007上昇350を維持して下さい。」

この時KA007の高度は、330(33,000フィート10,058m)だった。


18.20:28 TOKYO HF「了解」
18.21:48 F/D    高度警報の音がする。
18.22:55 F/D    マイクロフォンのカギ音
18.22:56  007 HF 1 東京管制塔 「大韓航空007到達地点レベル350」
18.23:00 TOKYO HF「大韓航空007 東京了解」
18.25:55  DYNASTY 312 HF「東京管制塔、ダイナスティー302 on 56。」
           ダイナスティーはコールサイン
18.26:00 TOKYO HF「ダイナスティー312 東京」
18.26:02       爆発音

レーダー式ミサイルが水平尾翼を外れ、KAL007の前から50m右後ろに命中。その爆発のショックが伝わる。

18.26:03  DYNASTY 312 HF「ダイナスティー312 飛行位置の確認ぺヨン 
          1825レベル30 estimate Shemya 1935 remainder ... remaining
          12...6 decimal 0 minus 50 ... 10 diagonal 40 です。どうぞ。」

ダイナスティー312からKA007へ飛行位置の連絡中、KA007の機首が縦に揺れ、緩やかに上昇。縦揺れのヨーイングが起こる。第1第2第3油圧装置が故障。高度警報が鳴る。

18.26:06 Chun  「何が起こったんだ?」
          爆発4秒後、大声で言った。
18.26:08 Son   「何ですか?」
18.26:10 Chun  「スロットを引け!」
18.26:11 Son   「エンジン正常、ジェットエンジン4基正常。」
18.26:14 Chun  「着陸ギヤ!」
18.26:15  F/D   高度警報が鳴る。
18.26:17 F/D   着陸ギヤのスイッチが選択可能になった。
          その音がカチとする。
18.26:18 F/D   高度逸脱警報器が鳴る。
18.26:21 F/D   自動操縦外の警報が鳴る。


客室のスチュワードたちは、消火器で機内火事を消そうとしていた。


18.26:22 Chun  「高度があがっているぞ!」
18.26:23 F/D   操縦室呼び出し音


操縦室のパイロットは、呼び出しに出る余裕がなかった。


18.26:24  Chun 「高度が上がっているぞ!」
18.26:25  Chun 「スピードブレーカーだ!」
18.26:26 Son  「何ですか?」「何なんですか?」
18.26:27
18:.26:29  Chun 「調べろ!」
18.26:30 F/D   操縦室連絡用チャイムが鳴る
         1F後部は火事。
18.26:30  TOKYO HF「ダイナスティー312、アンカレッジ応答して下さい。」
18.26:33  F/D  操縦室呼び出しの音
18.26:33  Chun 「現在、高度を下げることができない」
         機長から乗客席添乗員への連絡
18.26:34 Anaunce緊急降下です。注意して下さい。
        
高度が上がり続けているにもかかわらず、緊急降下のアナウンスが放送されたのは、酸素マスクのボタンを誰かが押した事による。緊急降下で酸素マスクが自動的に降りることになっている。

18.26:35 DYNASTY 312 HF "Thank you out." 直訳で「終了」「外だ」
        
「外れた」の意味。ダイナスティー312は、キンポ国際空港からの呼び出し番号で、KAL007は韓国側のレーダー圏内ぎりぎりの位置にいたが、前後の関係から「定期コースから外れている」という意味に近い。


18.26:38 Anaunce 緊急降下です。注意して下さい。
18.26:38 Chun  「高度が上がっているぞ!」上昇中にも関わらず、緊急
          降下のアナウンスが放送されている理由が、機長や乗
          員乗客には理解できなかった。
18.26:40 Chun  「手動に入らない」
18.26:41  Chun  「いつも通りに」
18.26:42  Chun  「手動が利かない!」


その時カチッと音がして自動操縦装置が手動モードに変わる。自動操縦が解除された音だった。機長が操縦桿をコントロールできるようになる。機体後部爆発後、42秒間上昇し続けた。


18.26:42 Anaunce 緊急降下です。注意して下さい。


日本語で放送される。機内圧力が外の圧力200hPaと同じになるまで抜けたため、勢いが無くなり、直立した後、急降下し始める。ミサイル爆発後約42秒。前列中列の座席客の中には酸素ボトルさえ吸っていれば無事だった。人もいた事は充分に考えられる。

18.26:43 Chun  「これも駄目だ!」

自動操縦以外の警報が鳴る。

18.26:45  Son  「エンジンは正常です!機長!」

機長が操縦桿を前に出していないにもかかわらず、KAL007が急降下し始めた。

18.26:46 Anaunce タバコを消してください。これは緊急降下です。
         
「タバコを消してください」は、発煙警報代わりの機内放送で「これは緊急降下です」というボタンと異なっている。後部客席室の空気が抜け、火が消える。その後、急減圧による白いガスと煙が機内に充満。緊急降下のアナウンスの時に酸素マスクが自動的に降り、酸素ボトルを直接使用する事もできる。しかしこの時の機内火災と煙の状態でエコノミークラスの乗員乗客は2Fや前方へ避難し始めた。

18.26:49 Anaunce タバコを消してください。これは緊急降下です。
18.26:50  Son  「それは全圧縮ですか?」
18.26:51 Son  「それで大丈夫ですか? 」
18.26:52  Anaunce タバコを消してください。これは緊急降下です。

と日本語で放送される。

18.26:52  Chun 「どっちも全部だ!」

機内客席用の圧縮酸素のスイッチは機内温度調節のエアコンと同じようにコクピットと別々に2つあると考えられる。

18.26:54 Son  「それでいいですか?」
18.26:55 Anaunce  マスクを鼻と口に着け、頭のバンドを調整してください。

爆発53秒後、マスクを使用する指示が機内で放送された。9秒間沈黙の急降下後、8秒間機首を上げ水平飛行をした。

18.26:57  007 HF 1 F/D 「東京管制塔 こちら大韓航空007」
18.27:01 Anaunce  マスクを鼻と口に着け、頭のバンドを調整してください。
18.27:02 TOKYO HF「東京管制塔KA007」
18.27:04  Son   「こちら大韓航空機007 ...私たちは(事故に)..遭遇している..」
18:.27:08 Anaunce マスクを鼻と口に着け、頭のバンドを調整してください。

と日本語で機内放送される。

18.27:09 Chun  「全圧縮だ!」
18.27:10  Son   「急速減圧のため10,000フィートへ降下」
18.27:15  Anaunce "Put out your cigarette." 

タバコを消してくださいと英語で機内放送される。

18.27:19 Anaunce "Attention emergency descent."緊急降下に注意してください

と英語で機内放送される。

18.27:20  Kim  「現在、私たちはこれをセットした」

操縦席の酸素マスクは、片手で届く所にあり、3人のパイロットは酸素マスクの用意をする事ができた。

18.27:21 TOKYO HF KA007 読めない。読めない。10048(高度フィート/無線周波数)
         で無線チェックしてください。
18.27:23 Anaunce 緊急降下に注意してください。

         と日本語で機内放送される。

18.27:23 Chun 「スピード!」

手動操縦が利くようになり、飛行機を加速させながら急降下させた。

18.27:26 Chun 「徐々に少しずつ少しずつ」

急降下後、少しずつ機首を上げ、水平飛行をしている間に酸素マスクを着けた。この時、進路を北へ取った。

18.27:27 Anaunce タバコを消して下さい。緊急降下です。

と英語で機内放送される。コクピットにも煙が入る。

18.27:33 Anaunce タバコを消して下さい。緊急降下です。

と日本語で機内放送される。

18.27:38 Anaunce 鼻と口にマスクを着け、頭のバンドを調整して下さい。
18:27:43 Anaunce 鼻と口の上にマスクを装着していください。
18:27:46 録音終了

 録音終了という事はあり得ず、これ以後のボイス・テープも回っているはずで、高度3,000m以下で酸素マスクをはずした時から再び始まり、東京管制塔を呼び続けていた。しかし着水時の爆発まで応答が無く、その間に「ランディング・ギヤを下げろ」という会話もあったという話が伝えられている。この話は、出所がはっきりしていないため、推理による可能性もあり確かではないが、KAL007に関する韓国側のブログで発見した事があった。東京管制塔の方が距離的に近く、連絡が取れやすかったためと思える。
 上空での爆発後、第1〜第3油圧装置が故障し、第4油圧装置だけが作動していた事を考えると、第4油圧装置によって降下上昇の操縦は可能であったとしても、左右へ曲がる事ができなかった。第1エンジンから4エンジンの出力を調整して旋回する事を試みたが、燃料漏れによる燃料不足のために海上へ着水するしか方法がなかったようだ。油圧装置が故障していたため、その時ランディング・ギヤは降りなかったのではないか。理論的には、着水時の爆発から水没までボイス・テープは回り続け、機内会話や脱出状況が解るそのテープが存在する。燃料タンクの爆発であれば、すぐには沈まず、爆発後もKAL007が海上に浮いていた間、録音テープが回っていたはずと考えられる。その最後の箇所が最も重要で、生存者がいた可能性もそれによって解る筈だが何故か肝心な箇所が公表されていない。


(C)Junpei Satoh/The truth of Korean Air Lines Flight 007, 2009-2024.6.27-